やるべきことは分かっているのに、なぜか動けない。
そんな状態に陥ると、自分の意志が弱いのではないかと感じてしまう人は少なくありません。
しかし、僕はこれまで1,000人以上のクライアントさんを支援してきて、明確に感じています。
行動が止まる原因の多くは「やる気」や「性格」ではなく、タスクの構造設計にあるということです。
この記事では、目標を達成するために不可欠な「タスクの細分化」について詳しく解説します。
単なるやり方のコツではなく、行動が自然に続くようになるための設計の原則を理解することが目的です。
なぜ目標を立てても行動が止まってしまうのか
目標を立てた直後は、誰もがやる気に満ちています。
「よし、やろう!」と決意し、やるべきことをリスト化する人も多いでしょう。
ところが、時間が経つにつれて現実の忙しさに押され、気づけばリストの内容は後回しになっている。
予定していた時間になっても動けず、他の作業に逃げてしまう。
そんな経験、ありませんか?
その正体は、タスクの塊が大きすぎることにあります。
「企画書を作成する」「新しい提案を考える」「部下の面談準備をする」
一見具体的に見えても、実際にはどこから手をつければいいのか曖昧です。
人間の脳は、曖昧で不確実なタスクを「リスク」と認識します。
内容が漠然としているほど、脳は「大変そう」「失敗しそう」と感じ、無意識のうちに避けてしまうのです。
これが、行動が止まるメカニズムです。
つまり、タスクの大きさをそのままにしておくと、脳は「行動を先送りする」という安全策を取るようにできています。
行動が止まる人の共通点は構造の問題
意志や根性ではなく、設計が原因
僕のクライアントさんの中には、「どうしても手をつけられない自分が嫌になる」と悩む方がよくいます。
しかし、その人たちは決して怠け者ではありません。
むしろ責任感が強く、真面目に努力してきた人が多い。
それでも動けない理由は、タスクが行動できる構造になっていないからです。
行動の流れが見えていない状態では、モチベーションや気合いでは限界があります。
僕たちが行動を起こすためには、まず「どの順番で」「どのレベルの粒度で」やるのかを決める必要があります。
これが設計の段階で欠けていると、脳は次に何をすればいいか分からない状態になり、結果として動けなくなるのです。
タスクが大きすぎると脳は拒否反応を起こす
たとえば「企画書を作成する」というタスク。
この言葉を見てすぐ動ける人もいれば、「構成を考える」「タイトル案を出す」などに細分化しないと動けない人もいます。
重要なのは、自分がどのレベルの細かさで動けるかを知ることです。
動けない人ほど、タスクの粒度を他人に合わせています。
上司や同僚、または過去の自分の基準に引きずられ、「このくらいの大きさならできるはず」と思い込みがちです。
しかし実際には、自分のエネルギー量や集中力、今の状況によって「動けるサイズ」は変化します。
その変化を無視してタスクを設定すると、脳は「負荷が大きすぎる」と判断し、無意識に回避してしまうのです。
つまり、行動できないのは意志が弱いのではなく、脳が守ろうとしている結果なのです。
目標を細分化する3つのステップ
ここからは、実際にタスクを細分化する方法をステップごとに説明します。
ポイントは、難しい理論ではなく「明日からすぐできる実践レベル」に落とし込むことです。
ステップ1.タスクを動けるレベルまで分ける
まずはタスクの塊を分けて、動けるサイズに整えます。
「企画書を作成する」を例にすると、次のように分けられます。
- 企画書の目的を1行で書く
- 構成案をざっくりメモする
- タイトルを3案出す
- 参考資料を2つだけ確認する
- 表紙ページを作ってみる
この中から「今できそうな1つ」を選ぶだけで、行動が始まります。
最初からすべて完璧にこなそうとすると動けません。
まずは「最初の一歩」を切り出す勇気が大切です。
ステップ2.「何を・どこまで・どうやって」を明確にする
タスクが曖昧だと、実行の段階で必ず迷いが生じます。
そのため、行動前に「3つの明確化」を行いましょう。
- 何を: 具体的な作業内容を明確にする(例:提案の骨子を書く)
- どこまで: 完了の基準を設定する(例:A4用紙1枚でまとめる)
- どうやって: 実行方法を決める(例:Wordでテンプレートを使う)
この3つを明確にしてから取り組むと、タスクが驚くほどクリアになります。
頭の中にある「ぼんやりした仕事の塊」が、行動の地図として整理されるのです。
ステップ3.一歩目の行動を具体的に書く
細分化の最終段階は、「次にやること」を明確に書き出すことです。
紙でもデジタルツールでも構いません。
書くことで、脳が行動指令を認識しやすくなるからです。
たとえば、「明日9時に、タイトル案を3つ出す」と書くだけで、実行率は格段に上がります。
行動を文字化することで、抽象的なタスクが「時間」「場所」「内容」を伴ったリアルな予定に変わります。
ポイントは、完璧なスケジュールを作ることではなく、次にやる一歩を可視化することです。
細分化がもたらす3つの効果
行動のハードルが下がる
大きなタスクは、着手の時点で心理的な抵抗を生みます。
しかし、タスクを分けることで「今すぐできること」が増え、行動のハードルが大きく下がります。
結果として、仕事への取りかかりが早くなり、行動量そのものが増えます。
達成感が増え、モチベーションが維持される
細分化されたタスクは、小さな成功体験を積み重ねやすくなります。
「今日も1つ進んだ」という感覚が生まれることで、自信が積み上がり、次の行動への意欲につながります。
これは心理学でも「自己効力感」と呼ばれ、行動継続の鍵になる要素です。
実行のリズムが生まれ、習慣化しやすくなる
小さなタスクを毎日積み上げると、行動にリズムができます。
それがやがて習慣になり、無理なく続けられるようになります。
習慣化が進むと、行動エネルギーの消費も減り、「やるかどうか」ではなく「自然にやっている」状態になります。
実例|細分化で行動が動き出したケース
以前、僕がサポートしたクライアントさんに、Aさんという女性マネージャーがいました。
Aさんは「資料をまとめる」と書かれたToDoを何日も後回しにしていました。
話を聞くと、「まとめる」とは何を意味するのか、どの部分まで完了すればいいのかが曖昧だったのです。
そこで、タスクを一緒に分解してみました。
- 構成を3案考える
- 既存資料を1つ確認する
- 目次だけ作ってみる
この3つの中から「目次を作る」を選んだだけで、Aさんの表情が変わりました。
その日のうちに作業を始め、翌日には資料全体の骨子が完成していたのです。
彼女は言いました。
「ここまで小さくしていいんですね。これならすぐ動けます。」
タスクを細分化することは、怠けではなく、スムーズに動くための準備です。
行動を小さく設計することで、動けないという「壁」を取り払うことができます。
目標達成できる人がやっている分解の習慣
成果を出し続けている人には共通点があります。
それは、どんな大きな仕事も「次の一歩」に分けて考える習慣を持っていることです。
- やるべきことを見たときに「まず何をすれば動けるか」を考える
- タスクの分解を「面倒な準備」ではなく「成功の設計」と捉える
- 小さく動いて、確実に積み上げていく
このように日常の中で「分解の習慣」を持つ人は、忙しさに流されにくくなります。
行動の仕組みが整っているため、気持ちの波や外的要因に左右されずに前進できるのです。
まとめ|行動を止めるのはやる気不足ではない
動けない自分を責める必要はありません。
行動が止まるのは、意志や性格ではなく、タスクの設計が合っていないだけです。
目標を達成する人は、必ず「分解の技術」を持っています。
タスクを小さく分け、着手のハードルを下げ、行動のリズムをつくる。
その積み重ねが、確実な成果を生み出します。
今日から、あなたのToDoリストを一度見直してみてください。
「これは自分が今すぐ動けるサイズになっているか?」
もしそうでなければ、もう一段階だけ細かくしてみましょう。
小さく動くことが、最短の近道です。
あなたの一歩が、確実な前進になります。
目標達成を加速させるヒント集





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